ミシンを楽しむために
Notes
ミシンをより楽しんでお使いいただくために
ぜひご覧ください。
糸調子について
本縫いミシンでは、
「下糸がからまる」ことはありません。
ミシンの下糸がからまってしまう…。このようなトラブルは、「上糸」と「下糸」の調整の勘違いが原因となっているケースがほとんどです。通常、本縫いミシンでは「下糸がからまる」ことはありません。糸掛けや糸調子の不具合でからまってしまうのは上糸なのです。布の裏側(つまりミシン下側)に出た糸がからまっているため、下糸の調子が良くないと判断されがちですが、上糸がゆるんでいるのに、下糸が引きつっていると思って下糸を調整するため、さらにからまってしまいます。
本縫いミシンでの「理想的な縫い目」とは、布が縮まず、しっかりと縫い合わされ、上糸と下糸が互いに吊り合っている状態。普段着用されている既製服の縫い目をご覧いただくと、おわかりいただけると思います。既製服は、特定の布と糸の縫製条件に特化し、徹底的に調整された工業用ミシンで量産されているので、誰もが納得の「理想の糸調子」になっています。
本縫いの縫い目は、針と共に布を貫通した上糸がカマに引っ掛けられた輪の中を、下糸の巻かれたボビンがくぐるように誘導され、上糸と下糸が絡み合います。あとは天秤で上糸のゆるみを取りながら布が送られて縫い目が完成します。この時、上糸と下糸にはそれぞれ縫い目を形成するのに必要な圧力がかけられ、お互いの糸締まりのバランスが保たれます。糸調子とは、この圧力を調整し、糸締まりのバランスを調整すること。糸調子を調整する基本は下糸の調子が良いことであり、下糸が縫う物に対して適正に調整されていることが重要です。
糸掛けや取り扱いを間違うと
ミシンに深刻なダメージが…。
ミシンは、工場から出荷されたままの状態であれば、下糸の糸調子はきちんと調整された状態です。箱から出して試し縫いを行ってみて、糸がからむ、縫い目が飛ぶなどの不具合がある場合は、まず、糸掛けや取り扱いの間違いがないかをご確認ください。
試し縫いで、あきらかに縫い目のばらつきや糸がからむトラブルを起こしてしまうと、その時点でミシンに深刻なダメージ(カマに傷が入ったり針が曲がったりなど)を与えている可能性があります。たとえ糸の掛け方や取り扱いを正しても、不具合が生じてしまうことも…。「買ったばかりなのに全然縫えない!」というお客様からのクレームの多くが、このような糸掛けや取り扱いの間違いが原因です。
糸掛けや天秤の方向・糸巻きの方法などは、機種によって使い方が異なります。ミシンを使いなれている方でも、初めて使うミシンにおいては、まず取扱説明書にしたがって慎重にご使用ください。
※ためし縫いは布が2枚重なる状態で行ってください。
布の縫い始めの対処について
布が針穴にくい込まないようにするには
工夫が必要です。
- 薄手でやわらかい布の縫い始め時には、針板に設けられた*「針穴」と呼ばれる穴に布がくい込んでしまい、布が送られず縫えなくなってしまうことがあります。
一般的な家庭用のミシンは、ジグザグ模様に縫うために針が左右に動かせるように針穴と押さえ金の穴が小判型になっています。これにより、針の刺さる周辺は布が押さえられず、針に対して針穴が大きすぎて針が布に貫通する際の抵抗で、布が針と一緒に針穴に引き込まれてしまうという現象が起きているためです。この現象を防ぐ対処法をご紹介します。
① 布の下に紙を敷いて縫う。
縫い始めの部分だけでもいいので、ハトロン紙など(ある程度コシのある薄手の紙)を布の下に敷き、針穴に布がくい込まないようにします。この方法は薄地が縮んでしまうような条件でも有効ですが、糸調子が変わってしまうので注意が必要です。 ※縫い終わった後、紙は破り捨ててください。
② 縫い始めの針の位置を工夫する。
③ 余り糸を引っ張る。
取扱い説明書には上糸と下糸は10cmほどミシンの後ろ側に引き出しておく様に指示されていますが、縫い始めの際に、この糸を引っ張って布送りを助けてやる方法です。この方法は布の送りがミシンの回転のどのタイミングで行われるのかということを感覚的に理解していないと、針と釜が接触するなど重大なトラブルを引き起こす原因にもなりますので②同様に多少の慣れが必要です。
- *「針穴」について
- 針の先の糸が通る穴を「糸穴」と呼ぶ例が多いのですが、廃止されたJIS のミシン規格ではミシン針板の針が刺さる穴を「針穴」と呼ぶように定義されていました。
ここでは、針板のその他の穴と区別するため、定義に従って「針穴」と称しています。